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【本】友罪/薬丸 岳 感想 実写映画公開間近の本作。今、自分の身近な人の衝撃的な過去を知ってしまったら。

 先日、某有名大型書店Tの森に迷い込んで数時間。

積ん読してある作品が実写化されていることを知りました。

薬丸 岳 著作の友罪という作品です。

映画は5月公開ということなので、番宣が始まり色々余計な情報が入って来る前に読んでおこうと思って読み始めました。

 

 

友罪 (集英社文庫)

友罪 (集英社文庫)

 

 

帯には<あなたは”その過去”を知っても友達でいられますか?>と書いてあります。

 

紆余曲折あり、地方の町工場に就職することになった27歳のジャーナリスト志望の青年益田が、同日に入社した無口で人を寄せ付けない雰囲気の同い年の鈴木という青年と、次第に交流を重ねていき親しくなるも、とあることがきっかけで日本中を震撼させた連続児童殺傷事件の犯人が鈴木なのではないかと疑惑を抱くようになる・・

 

という、少年犯罪のその後をテーマにしたフィクション小説です。

ミステリー作品ではありません。

文庫なのにページ数が解説を含めてほぼ600ページという非常に長い作品でありながら、内容が興味深かったことと文章が非常に読みやすかったため、遅読なわたしでも一週間かからず読み切ることができました。

 

ウィキペディアによると日本の現在の法律では、刑罰として罪を償わなければいけない年齢は西暦2000年の法改正で14歳以上となっていますが、この小説に出てくる連続児童殺傷事件当時はおそらく16歳以上と定められていたため、作品内の犯人の少年は事件当時14歳だったので、刑事責任は一切問われなかったものと思われますが、そこのところは小説内では詳しくは触れられていません。凶悪犯罪を犯した少年が、少年院で更生プログラムを受けた後、社会で生きる様子が描かれていました。

大事なことなのでもう一度言いますが、フィクションの小説です。

フィクションの小説でありながら、実際本当にこういうことがあるのではないかというリアリティがあります。

ちなみに、日本でも話題になった実際起きた事件の少年Aによる手記はこの小説の後に刊行されているものです。

 
この作品を読む前は、少年犯罪を犯した当人にスポットがあてられたものかなと思っていたのですが、実際は本当に帯通り、【過去を知っても友達でいられますか?】という内容です。
語弊があるかもしれませんが、うまい表現が思いつかなくてこういう言い方になってしまったのですが、益田と鈴木を取り囲む小さな町工場の狭い人間関係がひたすら描かれているという感じです。日本中を震撼させた事件が出てきていながら、そこに日本社会はほとんど登場しない形になっていました。
加害者家族や被害者家族の話などもほとんど出てきません。
そこが本当に現実感を生んでいて、当事者意識が高まる結果につながっていたと思います。
そして、益田と鈴木という二人の青年、町工場での職場仲間との交流のほかには、鈴木の更生プログラムに参加し少年犯罪の更生を仕事にしている女性と、鈴木とは別な意味で過去から逃げている同僚の女性益田の中学時代の同級生の母が登場しますが、この三名の女性たちの苦しみや葛藤もこの作品の読みどころの一つです。
 
 
本の内容がデリケートな内容なので、レビューを書くのも躊躇ってしまっていたのですが、わたしが個人的に思ったことを書かせて頂きたいと思いました。
ここからは、本当にこの本を読んでのわたしの個人的な感想になりますので一般論とは違うかもしれませんが、ご容赦願いたいと思います。
この作品は職場で起こる出来事なので、職場関係の人間関係を中心に話していきます。
 
人生で自ら選べる人間関係って、友人と恋人と成長してから新しく築く家族だけだとわたしは思っていて、そもそも自分の生物学的な親や親せきは選べないし、職場は選べるけど職場の中の人はその職場に入ってみないとわからない
 
 
ある程度の人生経験を重ねていけば程度の差こそあれ、誰しも人に言いたくない過去の一つや二つはあるとは思います。
他人のそういう【人に言いたくないこと】をあえてほじくり返したり、もしそういうことを万が一知ってしまったとしても、許容できるようになったり、ましてや糾弾しないということが大人になることなんだろうと思っています。
人生には本当にいろんな形があり、考え方にも色々あるとだんだん知っていくからです。
わたしは、映画やドラマや本は大好きですが、そういったわけで特に職場の人なんかの過去やプライベートにはあまり興味がなく【人それぞれ】と思うタイプなので、冷たいように思われるかもしれませんが自分から踏み込むことは基本ほとんどないです。
 向こうから身の上話をして来てくれる場合は、聞くことに関しては特に嫌だとは思わないし口も固い方だとは思いますが、そもそもあまり興味がないのでこっちから詮索することはしません。
でも、万が一向こうから話してきてくれた内容があまりにも衝撃的すぎたら、自分はどうするだろうかと考えました。
まず、職場の同僚(友人と向こうは思っている)にしたとしても重大なことを話してくるという間柄だったら、とりあえず過去の内容にもよりますが、わたしは聞いたことを忘れるようにしたいと、この作品を読んで思うようになりました。
忘れることは無理だったとしても、二度とそのことには触れたくないと相手に話すかな。
 
この作品を読む前もうっすら思っていたのですが、読んでみてその思いを強くしたことがあって。
最近の日本ってなんでもすぐ炎上するし特定班が動いてなんでも特定されちゃうし、加害者やその家族がいやがらせの被害に遭ったりするけどおおっぴらに、加害者を糾弾していいのは被害者とその関係者だけだと思う。
ましてや被害者が被害に遭うのが悪いと責任を問うようなことはあってはならないと大多数の人が思っていると思うのですが、そうはなっていないのが実情だったりする。
一方、被害者は死ぬまで、加害者を糾弾する権利があると思います。
法律で定められた罪を償ったとしても関係ないし、人生を壊されたことを一生加害者に責任を追及していいと思う。
でも、関係ない他人が報道などで、家や仲間内で世間話的に社会や世間で起きてることとかを話すのは当然だと思うのですが、ネットでの個人攻撃が激しすぎる世の中。
 
この作品で一番強く感じたのは、当事者じゃない世間の風の冷たさでした。
特にわたしは女性なので、作品中に出てくる同僚の女性はかなり切なく思いました。
他人の人生をほっとけない人たちに、面白おかしくいつ今の暮らしを壊されるかわからないと怯えながら生きていく生活はかなり厳しく、人生はいつでもやり直せるなんて嘘だと思ってしまう事案でした。他人は他人の過ちをいつだって許さない。
 
この作品のような事例に関しては、
知らないほうがいいこともあると思うばかりですし、知らなければ平穏に暮らせていたのに・・と思います。
 
みなさんが、この本を読んでどう思うかはわかりませんが、わたしはひたすら切なかったですね。
 
読んだ感想書いてみたはいいけど、うまくまとまらなかったです。ごめんなさい。
 
 
というわけで来月公開の映画、『友罪』。
生田斗真さんと瑛太さんのダブル主演です。
 
 
公式サイトを読んでみたら、だいぶ原作とは話が変わっているようですが、機会があれば映画も観てみようと思います。
 
友罪】が興味深かったので、【友罪】の次作品、『Aではない君と』も買ってきてみたので、こちらも読んでみようと思います。

この作品は、少年犯罪を犯した子どもの父親が主人公の作品です。

 

Aではない君と (講談社文庫)

Aではない君と (講談社文庫)

 
 
 
 それでは、また。

 

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