たま欄

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【本】だから荒野/桐野夏生 感想 人生折り返し地点で、不幸ではないけどもやもやしてる人に読んでほしい。

 久々に読んだ桐野夏生の本『奴隷小説』(レビューはこちら)がやっぱり面白かったので、未読の桐野夏生の著書を3冊ぐらい購入してきました。

なので、本のレビューはしばらく桐野作品シリーズになりますのでご了承ください。

 そのうちの1冊目の感想になります。タイトルは『だから荒野』です。

 

 

だから荒野 (文春文庫)

だから荒野 (文春文庫)

 

 

 
相変わらずレビューが難しい桐野作品ですが一言で言うと、『中年女性が主人公のロードムービーのような小説』という感じでしょうか。
現実感があり、重さは少なく軽快な感じで話が進んでいきます。
 
東京に住んでる主人公の主婦が、ある出来事をきっかけに東京を飛び出し一人車で南下を始めたことで掘り起こされる、今までの人生で築いてきた人間関係、出会う人たちと新たに築く人間関係、主人公本人の人生などが描かれます。
こう書くと、すごく爽やかなイメージに思われた方もいるかもしれませんが、そこは桐野夏生
主人公の主婦、夫、大学生と高校生の息子2名というメイン登場人物から主人公の友人、夫の外での交友関係、旅の途中で出会う人たちまで、そこに生きているのは生々しいリアルな人間たちです。程度の差こそあれど、主人公含めて【そこまでクズってわけじゃないけど、そこそこのクズ】って感じでしょうか(笑)
客観的に小説として読んでいるとそういうふうに感じましたが、まぁ実際問題、みんな上っ面を取り繕ってるけど、こんなもんなのかなって。
 
桐野作品あるあるで、男性がひどく描かれがちなんですけど、今回もこの主人公の夫が、まぁひどくて(笑)犯罪者とかDVとかそういうわかりやすいやつじゃないんです。
 
おそらく、ある程度の年齢を経た女性なら周りの男性何人かの顔が浮かぶような人です。自己肯定感がものすごく高くて、自分のことが世界で一番大好きで、特に人生で挫折とかもしてなくて、ひとの気持に寄り添えないんだけど、計算高いわけでもなく幼稚で、かといって憎むべき存在でもない。おそらく外面はよく、人当たりもわるくなく、要領よく出世するタイプ。
でも、会社で特に女性社員にすごく嫌われてると思う(笑)
 
その感じがすごくうまく描かれてました。
もし、この作品を読んだ男性がこの夫が妻に疎まれるのはともかく、会社で嫌われている理由が一発でわかるなら多分セーフです(笑)
 
 
といったわけで、リアルな人間関係で綴られる一つの家族を中心とした様々な人生が描かれる小説だったわけですが、わたしの読後感は、生活の様々なあるあるからくる小さなイライラが満載の作品でありながら、逆に『なんか少し元気になった』っていう感じでした。
 
 
わたしが好きなロードームービー感があったのも読んでいて楽しかった部分のひとつです。
主人公は高速道路をひたすら南下するんですが、わたしが個人的に高速道路での車の旅が好きで。
緑の看板がたくさん出てきて、目的地が近づいてきたり、夜のSAや朝のPAに集ういろんな人たちがいたり、フードコートで何か食べたりするの楽しい。
非日常感があって好きなので、わたしも高速道路でどこか遠くに行きたくなりました。
 
それと、作品全体にあふれる解放感と生命力につきます。
 
主人公がわたしと全く正反対の性格で、迷わない性格なのも大きかったと思います。
主人公が何も考えずに行き当たりばったりで行動して、自分の好きなように行動するさまに力をもらいました。
行き当たりばったりなのでもちろんトラブルも起きるんですが、それでも読んでるうちに、『あんまり深く考えすぎんな、生きてさえいればそれだけで立派』って作品に言われているような気がしました(笑)
単純に、生きてることが何よりも大事なんだ、もっと自分を大事にしなさい、生きてさえいれば、人生どうにでもなる。
 
とにかく読みやすくてさらっと読めたし、内容もそんなに重たくなく人生半ば、特にそこまで不幸でもないけど、幸せ感一杯でもないってもやもやしている人に是非読んで欲しい一冊でした。
 
 

 

 

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