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【本】顔に降りかかる雨 桐野夏生 感想

顔に降りかかる雨 桐野夏生著 読了しました。

’93年度の江戸川乱歩賞受賞作品です。

 

 

顔に降りかかる雨 (講談社文庫)

顔に降りかかる雨 (講談社文庫)

 

 

 

 

主人公の村野ミロのところに、ある男が訪ねてくる。

親友の恋人であるその男は、

ミロの親友が1億円という大金を持って行方をくらましたという。

暴力団がらみの金の行方を巡って、親友との共謀を疑われたミロ。

成り行きで、親友の居所と金のありかを調査することに。

というストーリーです。

 

村野ミロシリーズの序章作品なのですね。 

桐野夏生作品は大好きなのですが、

村野ミロシリーズは実は初めて読みました。

 

非常に読みやすく、すらすら読めるミステリーです。

わたしみたいな素人が、こんな有名作家に、

こんな安っぽいことを言うのは、非常に気が引けるのですが、

桐野夏生は本当に文章が上手いです。

 

この作品は、グロテスクやOUTなどが好きな私からすると、

物足りなさは感じてしまうのはいなめないのですが、

それでも最後まで読み手を引き付けておく魅力があります。

登場人物も比較的少なく、話も理解しやすかったです。

 

グロテスクやOUTは作品としての力も魅力も、

ものすごくありますが、その分、苦手な人もいるかもしれないので、

こちらの作品であれば、桐野夏生初心者の方には勧めやすいです。

気合いやパワーがなくても読めます(笑)

 

最近流行りの、突飛すぎる展開もないかわりに、

非常にまとまりがいいです。

伏線の回収も割りときちんとありました。

 

強引な展開もあるにはあるのですが、

文章力の上手さでカバーされてると感じました。

 

小説はストーリーの内容はもちろん、

人間の心や闇の部分をうまく表現し、

登場人物の生命力が伝わってくるところに面白さがあると思うのですが、

桐野作品の人気の秘訣はそこにあると思います。

 

グロテスクは疲れるので、再読をかなりの長い間保留していたのですが、

この作品をきっかけに、もう一度読んでみようかなと思います。

 

これは、あとがきを読んでの感想なのですが、

昔、本のミステリーや、ハードボイルド界に、

3Fというブームがあったと書いてあり、

少し、衝撃を受けました。

 

Fは、フィメール、女性を現しており、

著者、主人公、読者が女性というものです。

特筆されるほど、当時は珍しく、

こういうところにも、女性進出は難しかったんだと痛感しました。

 

女の名前だと売れないので、

あえて中性的なペンネームの作家さんや、

漫画家さん、けっこういますよね。

 

昔の女性たちが頑張ってくれたお陰で、

女性が女性のリアルな心情を描いた、

本を好きなように読める今を嬉しく思います。

 

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